二番目の姉

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「姉上…アシはこんまい頃、どうだったが?」  まるで、記憶の一部を探し求めるかのように龍馬が尋ねる。そんな質問に、栄は懐かしそうに目を細め、当時を思い返すようにゆっくりと語り始めた。 「龍馬さんはこんまい頃、まっこと泣き虫やったがですよ…」 「ア、アシは、こんまい頃から泣き虫やったがですか?」  嬉しそうに話す栄に反して、龍馬は些かの落胆を覚える。ガッカリと肩を落とし、大きな溜め息をつく。 「──けんど、龍馬さんが生まれる前の晩、母上は大空を天翔る龍と馬の夢を見たそうながです。そうやき、おまさんは龍馬と名付けられたがですよ!」  母からも聞いた事のない、龍馬自身初めて耳にする話だった。 「そうなが?」 「そうですよ!龍馬さんが生まれて来ゆうがを、一番に喜んじょったがは母上やき!」  栄から聞かされた話に、龍馬は感激する。実際、自分の勇ましい名前を龍馬はとても気に入っていた。しかも、それが大好きな母が名付けてくれたと言うのだから尚更である。 「龍馬!おまん、こんなが所におったがか?」  仁王様のような厳しい顔付きの乙女、どうやら龍馬を探していたようだ。 「あら、お乙女さん!どういたがです?」
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