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そいつは黒いストライプのシャツに、黒いベストを羽織りながら控え室に入ってきた。
「おはようございます」
「あっ!紀章さ~~ん、助けてくださいよぉ」
一見、爽やかそうな黒髪眼鏡の青年。
それが俺の宿敵、折原紀章(24)。
タケが紀章くんを見るなり、情けねぇ声をあげて懇願しはじめた。
(ホント、コイツどこまで情けねぇんだ……?)
そんなふうに思いながらそっぽ向いている間に、さっきの言い掛かりにも近い説明をするタケ。
それを親身に聞いてる紀章くんの黒縁眼鏡の奥が光ったような気がした。
そして、この一言。
「それ、店長が悪いんじゃないですか?」
……………おい。
どこをどう取れば俺が悪いんじゃ。
とか、紀章くん相手には言えない俺。
だけど、不服は不服。
「だからって何で俺がコイツの掛け持ちの短期バイト行かなきゃなんねぇの!?
俺は一応、店長でしょ―が!」
文句を言わない俺ではない――。
だってこんなの理不尽じゃんか!
文句を聞いた紀章くんは深~いため息の末、諭すような声で語りはじめた。
「いいじゃないですか。タケさんだって好きで行かれないわけじゃないですし。
しかも、店長のせいで骨折したんでしょう?」
「だ・か・ら!何で俺のせいなの!?そこから教えてよ!」
「それに、店なら大丈夫です。昼間の仕事なんですから」
オレの質問はスルーか!!
「……要は何?
朝はガキの子守して、夜は店出ろっていうの!?」
どうですか。
この人の鬼っぷり!
ひどいでしょうっ!
俺は朝がめちゃくちゃ弱いって知りながら、こういう事言ってくるんですよ、この紀章って男は!
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