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…バレンタイン。
去年まではそこまで深く考えてへん普通の日やったはずなんやけど。
今年はきっと戦争で、絶対に長期戦。
だって、ウチが不覚にも好きになってしまった相手が、今まで敵だと思ってた崚行なんやもん。
ほんまウチありえへん。
「ほら、早く行かなきゃ帰っちゃうよ?いいの?たらこ唇さん」
「誰がたらこ唇やっ!」
「ツッコミはいいから、早く行きなさいよ、めんどくさい…」
「…ほな行ってくる」
真優香…
あんたヒドすぎるわ。
でも、そうやって言うてるけど、それが真優香の優しさなんやってこと、わかってんねんで。
にしても、
勢い良く出て来てしまったけど、どんなして渡したらええの?
いつも喧嘩ばっかりなんやで?
いきなり可愛こぶって、゙これ作ってん、食べてくれる?゙なんて言えるはずないやろ。
「げ、」
「あ、寿々歌やん。ってか、げ、って何やねん!」
「あー…ははっ」
笑えへんわ。
どうやって渡すか、まだ考えてへんのにっ!
「また喧嘩を売りに来たんか?」
「なっ、ちゃうよっ!いつも喧嘩売るのは崚行の方やんか」
って、ちゃうやろ ウチ!
言い合いをするために、コイツを探してたわけちゃうやんか!
やっぱり長期戦や…
「なんや、その手に持ってるやつ」
「え、あ、これはっ、」
見つかってしまった。
このまま勢いで渡しちゃおうか?や、でもまだ心の準備が!
心の中で一人戦っていたら、崚行はニッと口角を上げて笑った。そのニヤニヤ顔でウチに近付くアホ崚行。
「ふーん、誰に渡すん?寿々歌でも女の子してるんやな~♪」
「バ、バカにしてるん?」
「別に?」
「なんやそれっ、」
頭を叩こうとすると、崚行は笑いながらまたウチから離れてく。
「それ貰う男が可哀想やなー」
「なっ!」
今の言葉はいくらウチでも傷つく!
どこまでも腹立つ男やな。でもそんな男が好きなウチもバカやけど。
「その可哀想な男は、アンタや!」
「…は?」
―そのアホ顔に―
(チョコが入ってる箱を)
(投げつけてやった)
え、俺っ!?
可哀想な男になった俺。
でもめっちゃ嬉しいんやけど。
とりあえず俺は、走って逃げた寿々歌を追いかけることにした。
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