46人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
北九州。
帰ってきた。この街に。
あの人に出会った街に。
これから俺は、ここでひっそりと暮らすんだ。
…とりあえず何か温かいモノでも飲むか…
心が寒い…
俺は、近くの喫茶店に入った。
しばらくすると、店員が注文を取りにきた。
なんだか人と話したくなかった俺は、うつむいたまま、ホットコーヒーを注文した。
すると突然、店員が話しかけてきた。
「ふーん。おやおや。どっかで見た顔だと思ったら。東京行ったって聞いてたけどね。てゆーか元気無いじゃん?」
店員は、「ヒュー」と言いながら、パチンと指を鳴らした。
!?
この言動は、まさか…
俺は、ゆっくりと顔を上げた。
「はっはーん。さてはナオンにでもフられたかー?コノコノ」
肘で突っついてきたその男は。
昭和っぽいアクションを惜しげもなく繰り出すその男は。
「さ、仕事終わったらパチンコの吉宗でも打ちに行くかな」
サザエボンと書かれたTシャツを着こなすその男は。
紛れもなく、吉宗のあんちゃんだった。
銀杏青心小僧
最初のコメントを投稿しよう!