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「それはナトリウムだよ」
突然掛けられた声に空は驚きながら振り向いた。
「藤野さん……」
藤野は以前としてポケットに手を突っ込んだまま立っていた。柔らかい笑みを浮かべて。
「ふふ……驚かせてごめんよ。君は空くんだったかな?」
「あ、はい」
然斗と話しているところを聞いていたのか、彼は既に空の名前を知っているようだ。
「彼女が気になるのかい? さっきからよく眺めているけど」
「いや、そういう訳でもないんですけど」
そんなに僕はしょっちゅう中野さんを見ていたのだろうか?
「ただ、不思議な感じだなって。さっき話し掛けたんですけど、まともに扱ってくれなくて」
そう言って頭を掻いていると、藤野は小さく笑った。
「ふふ……確かに人と関わりたくなさそうにしているよね」
そう言うと彼は、空の傍にあったナトリウムの茶色い瓶を手に取った。
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