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「ナトリウムの性質はもう習ったかい?」
「あぁ……どうだったでしょう?」
正直な所空の成績は良くない。どちらかと言うと悪い。いや、ぶっちぎりで悪い。
中学生の時に習ったこともうろ覚えで、ナトリウムのことについては習ったのかすら曖昧だった。
こんなのでよく高校に入学出来たものだと、我ながら感心する。
藤野はポリポリと頭を掻いている空の横でおもむろに瓶の蓋を開けると、いつの間にか持っていたピンセットで中からほんの一つまみ程度の物体を取り出した。
「ついておいで」
藤野はそういうと窓の方へ向かって歩き出した。
空は訳も分からずその後を付いていく。
「面白いよね。生き物なんて誰かと関わらないと生きていけないのに、敢えてそれを避けようとする人もいる」
「は、はぁ……」
何が言いたいんだろう?
藤野は窓をガラリと開けると、ピンセットを持った手を外に出した。
「見てごらん」
そう言って、彼はピンセットを軽く振った。瓶から取り出した物体は、二階である実験室からコンクリートの地面へと落ちていく。
今朝は雨が降っていた事もあり、所々に水溜まりがある。
物体はそのうちの一つの水溜まりの中心へと着水したかと思うと、ボンッと小さな爆発を起こした。
「おぉ……!」
空は思わず声を漏らした。
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