新次元生活

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ついに、空の直前の人まで順番が回ってきた。 さっきも言った通り空の席は一番前なので、その人は彼の遥か後ろで立ち上がった。 女の子だった。 髪は見たことのない、透けるような銀髪。顔立ちは整っていて、遠目に見ても分かる明らかな美少女。 思わず空が見とれていると、彼女はチラッと空を見てから言った。 「中野美咲、よろしくお願いします」 早っ! 趣味言ってないしもう着席してる! 目を閉じてあたかも周りに興味が無さそうな態度だ。 「お、おぉ……もう少し何かないのか?」 先生も動揺している。 「ありません」 「趣味は?」 「ありません」 「習い事とかは?」 「ありません」 「なら――」 「ありません」 「…………そうか、じゃあ次……」 すごい子だ……。五津井教諭の筋肉が収縮して見える。 生徒達も口をぽかんと半開きにしている。 というか次は僕か! はっ!しまった!  今のいろんな意味でインパクトのある自己紹介のせいで言う事忘れた! やむを得ず、空は言葉の思いつかないまま立ち上がった。 「……えっと、仲宮空です」 話が続かない。必死に言葉を紡ごうとするが、ただ無言の時間が過ぎていくばかり。 「趣味は…………………えっと……………………よ、よろしくお願いします……」 完全に失敗だ……。趣味がよろしくお願いしますって意味不明だし。 多分痛い人に見られた。あ、そうだ、映画鑑賞って言おうとしたのに……。 というか皆、中野さんと僕を交互に見るのは止めてくれないか? とにもかくにも、そんなこんなで空の高校生活は何ともイマイチな形でスタートしたようだった。
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