始まりから終わりへ

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信号が青に変わってからペダルを踏み出すまで、しばらく余韻に浸っていた。くだらん恋煩いを抱えた上岡にとって、見ず知らずの人間との接点などこれっぽっちもないのだ。日々、街中で出くわす担い手の人間と社会の底辺でひっそり静かに暮らす上岡にとって何ひとつ結びつくものがないから残酷。今年1月に逮捕されて以来、上岡自身、社会復帰を目指そうと思ったことはこれっぽっちもない。犯罪で手を染めてしまって、もう自分は人間ではないと思い込むようになった。人はそれを“ゆとり”と揶揄する。団塊の世代が生んだ命は虚しくも生きている。陽の光りを避けながら静かに生きている。
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