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日の出とともに、作戦通り決行された。
5つの城門から、鉄の盾で固めた前衛が進軍していく。
童燕将軍、紫苑様とともに天守閣から眺めていた。
敵陣からは矢が雨のように降り注ぐ。
鉄の盾を貫くのは到底無理だろう。
およそ15000の兵士が城外に陣を組んだ。
場内では騎馬隊が揃っている。
犠牲は全くといっていいほど出ていない。
このまま一斉攻撃がはじまるだろう。
兵力で既に勝っている。地の利もこちらにある。
誰もが勝利を疑わなかった。
合図たろう。太鼓や笛、ホラ貝の音が響いた。
突然、紫苑様が泣き出した。
大粒の涙を流し、城に響き渡る大声で泣きはじめた。
そして気づいた。左目、眼帯の下が濡れていることに。
今まで左目から涙が流れたことはなかった。
しかも真っ赤な涙だ。
血ではない。涙だ。
黒の眼帯が赤に変わっていた。
今思えば、紫苑様には不思議な力があり、結果が分かっていたのだろう。
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