知の章

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××65年 10月 これを記すのはひさしぶりだ。 一生の不覚。旅の疲れで両手が使えなくなった私は筆を握ることができなかった。 今、私は口に筆をくわえ、これを記している。 明日、紫苑様の15歳の誕生日である。 めでたい日のはずが、私のせいで悲しみに暮れようとしている。 ついに私にお迎えが近づいたようだ。 健康が取り柄だった私も年には叶わないか。 この書を紫苑様に授け、私は役を、父を終える。 紫苑様の役にたてただろうか。 将軍様に顔向けできるのか。 疑問はいくらでも沸いて来る。 いかん。書が濡れてきた。 紫苑様。御自身がなさることを見つけ、正しいと思うことを実行してください。 私はここまでのようです。 武運を祈りますぞ。 海棠
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