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時間の概念がないこの世界で、オロバスは一瞬とも永遠ともいえる時間を待っていた。
すると世界に一筋の光が現れた。
オロバス「知りたいことは得られたか?」
遊斗「あぁ、ほぼ全てと言っていいほどな」
そういう遊斗は、満足したような表情である。
オロバス「では何故、我がここにいるのか教えようではないか」
その言葉を聞き、遊斗は真剣に聞く体勢をとる。
オロバス「そう畏まる必要はない。大した話でもないからな。」
自傷気味にオロバスは言う。
オロバス「女神の息吹により<厄災の雲>が払われた後に、我は女神エウレスに会った。彼女は闇の魔力が嫌われ、人間の中から淘汰されるのを知っていたみたいだ。」
遊斗は黙って話に聞き入っている。
オロバス「世界は、無属性以外の魔力のバランスにより成り立っている。淘汰されてしまったらバランスが崩れてしまう。それを防ぐため、我に会いに来たのだと女神は言った」
そう語るオロバスは悲しげである。
オロバス「理由はどうであれ<厄災の雲>を発動させたのは我。その責任のため、世界の一角に集められた<厄災の雲>と我は、女神により記憶の間に封じられた。」
遊斗「それで世界のバランスは?」
オロバス「魔力とは世界を巡るもの。鏡を媒体に世界に留められたので魔力のバランスは崩れることはなかったが、使える者が減ったのは事実だ。」
話は終わったが気まずい沈黙が続く…。
オロバス「さて、ここでする事は終わった。そろそろ帰るといい。」
遊斗はその言葉に頷き、礼を言う。
遊斗「ありがとう…」
その言葉にオロバスは満足気に頷き、軽くステッキを振り魔法陣を発動させる。
オロバス「おまえの記憶の中に、闇の魔法の知識も植え付けておいた。役に立つであろう」
そう言っている間にも遊斗を包む光は強くなる。
遊斗は頭をかきながらいった。
遊斗「ホント、助かるよ…。また今度お礼をさせてくれ」
そう言い切った瞬間、遊斗は姿を消した。
オロバス「不思議な青年よ、どこかあいつに似ている。とても懐かしい…」
黒の世界にまた一人残されてしまった彼だが、その表情はとても清々としていた。
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