Chapter 3 -day-

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──合併の日・前日。 アルは一人ある場所を訪ねていた。数日前にもその場所に訪れており、今回の依頼に使う道具の調達を頼んでいたのだ。 町外れの少し古ぼけた居酒屋、そこに行く。 「…………」 中には丸いテーブルが幾つかと、カウンター前に席がちょうど10ある。 そこのカウンターから見て左から二番目の席に座り、注文をする。 「ベゼルワイン8つ。あとは超熟チーズ」 「……」 バーテンダーが無言で頷き、酒を用意するかと思いきや奥へ行ってしまう。 アルも立ち上がり、酒場のトイレに向かう。 酒場のトイレは男女わかれて2つと、さらに鍵のかかった使用禁止の古いトイレが2つある。 その古いトイレの男性用の扉をアルは開ける。 そこからさらに奥へいき、4つある大トイレの奥から2番目のドアを開ける。 その入ってすぐの床にはなにもない。 だが、ズズズ……と床がスライドし、階段が現れる。 発光石によって暗闇を照らす階段を降りていくと、アルに声がかけられた。 「…………アル、きたか」 「ロイズ、道具は?」 アルも含めた一部の人間のみが知る、あらゆる道具の調達屋。それがこの場所である。 実際その部屋はあらゆる道具が置かれていた。 今回アルが依頼したのはある特殊な縄と丸い筒のような玉だった。 「用意できてるぜ」 調達屋・ロイズ・シュケルス。 黒髪で腰まで髪が伸びている。頭の赤いバンダナが印象を強くする。 「助かる」 アルは大きめの布袋に入れられた品物を受け取る。 「アル、今回は合併の邪魔でも依頼されたかい?」 「………………相変わらずだな、その情報網、知りたいものだ……」 とくに肯定も否定もせず、アルは出口に向かう。 出口は入口とは別になっており、ロイズが座っている椅子の後ろ側の扉が地上に繋がっている。 「ま、暫らくはここにいるからいつでもきな。なんでも用意しといてやる」 アルは振り向きもせず頷き、重い扉を開けて出ていく。 部屋は再びロイズ一人に。 「……リバース・サイドか。口外すれば消されるのは俺……か?」 下を向きながら苦笑し、ロイズはまた別の青い扉の向こうへと向かった。 明日は、合併の日──。
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