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──合併の日・前日。
アルは一人ある場所を訪ねていた。数日前にもその場所に訪れており、今回の依頼に使う道具の調達を頼んでいたのだ。
町外れの少し古ぼけた居酒屋、そこに行く。
「…………」
中には丸いテーブルが幾つかと、カウンター前に席がちょうど10ある。
そこのカウンターから見て左から二番目の席に座り、注文をする。
「ベゼルワイン8つ。あとは超熟チーズ」
「……」
バーテンダーが無言で頷き、酒を用意するかと思いきや奥へ行ってしまう。
アルも立ち上がり、酒場のトイレに向かう。
酒場のトイレは男女わかれて2つと、さらに鍵のかかった使用禁止の古いトイレが2つある。
その古いトイレの男性用の扉をアルは開ける。
そこからさらに奥へいき、4つある大トイレの奥から2番目のドアを開ける。
その入ってすぐの床にはなにもない。
だが、ズズズ……と床がスライドし、階段が現れる。
発光石によって暗闇を照らす階段を降りていくと、アルに声がかけられた。
「…………アル、きたか」
「ロイズ、道具は?」
アルも含めた一部の人間のみが知る、あらゆる道具の調達屋。それがこの場所である。
実際その部屋はあらゆる道具が置かれていた。
今回アルが依頼したのはある特殊な縄と丸い筒のような玉だった。
「用意できてるぜ」
調達屋・ロイズ・シュケルス。
黒髪で腰まで髪が伸びている。頭の赤いバンダナが印象を強くする。
「助かる」
アルは大きめの布袋に入れられた品物を受け取る。
「アル、今回は合併の邪魔でも依頼されたかい?」
「………………相変わらずだな、その情報網、知りたいものだ……」
とくに肯定も否定もせず、アルは出口に向かう。
出口は入口とは別になっており、ロイズが座っている椅子の後ろ側の扉が地上に繋がっている。
「ま、暫らくはここにいるからいつでもきな。なんでも用意しといてやる」
アルは振り向きもせず頷き、重い扉を開けて出ていく。
部屋は再びロイズ一人に。
「……リバース・サイドか。口外すれば消されるのは俺……か?」
下を向きながら苦笑し、ロイズはまた別の青い扉の向こうへと向かった。
明日は、合併の日──。
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