右方向

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冷たい。 寒い。 怖い。 これは夢なのか。 それにしてはいささか残酷すぎる気がするのは俺だけ? どうしても逃れられない。 事後のあと。 一人急速に冷める身体は誰も温めてはくれない。 一夜だけ。熱い夜を過ごして。終わったらさっさと相手は帰っていくそんな毎日。 辛くはない。 それはもう俺にとってあまりに日常すぎて。 取り立ててひっかかる事もない。 だけど一つ。 この虚しさだけは。 いつまでたっても俺の胸の奥底を食い荒らし続けている。 忘れていた情感を、残さず食い潰していくように。 だがもはや俺も一々それにあらがったりはしない。 運命なんだ。 割り切る事を覚えた大人に、悪あがきは無用だろう。 俺だってもう28だ。 淋しさに打ち拉がれたって泣いたりはしない。 それくらいは、成長した大人だと自負している。 今更特定の相手を作る気もない。 それこそ野暮だ。 どうせ潮時になれば親が見合い相手でも勝手に用意するだろう。 別にそれまで乱れた性生活を送っていても、だれも咎めないはずだ。 寝る『相手』が『男』でも。
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