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すると、珍しく伊織の部屋にノックの音が響く。おそらく祖母だろう。伊織は祖母と二人暮しをしている為、相手はすぐにわかった。ドア越しに伊織の祖母が声をかける。
「龍也、お客さんだよ」
「真二かな……わかった」
伊織は重たい身体をベッドから引き剥がし、自室の扉を開けて玄関に向かう。服装は寝巻き同様のジャージだったが、相手が木山なら何も気を使うことはないと、伊織はそのまま玄関の扉を開けた。
目の前に居たのは、黒いタイトなジャージを着て、肩に2つの──恐らくギターとベースが一本ずつ入った黒いソフトケースを背負った楠木だった。
「夜分遅くに申し訳ない」
本当に申し訳なく思っているのかわからない、腕組みをし微笑みを浮かべている楠木を見て、伊織は目を見開いて驚き、同時に戸惑った。
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