Section 1-2

3/19
2012人が本棚に入れています
本棚に追加
/543ページ
 すると、珍しく伊織の部屋にノックの音が響く。おそらく祖母だろう。伊織は祖母と二人暮しをしている為、相手はすぐにわかった。ドア越しに伊織の祖母が声をかける。 「龍也、お客さんだよ」 「真二かな……わかった」  伊織は重たい身体をベッドから引き剥がし、自室の扉を開けて玄関に向かう。服装は寝巻き同様のジャージだったが、相手が木山なら何も気を使うことはないと、伊織はそのまま玄関の扉を開けた。  目の前に居たのは、黒いタイトなジャージを着て、肩に2つの──恐らくギターとベースが一本ずつ入った黒いソフトケースを背負った楠木だった。 「夜分遅くに申し訳ない」  本当に申し訳なく思っているのかわからない、腕組みをし微笑みを浮かべている楠木を見て、伊織は目を見開いて驚き、同時に戸惑った。
/543ページ

最初のコメントを投稿しよう!