呼び声

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俺のその言葉を聞いてもう一度紙を見、中越はすぐに目を見開く。そして目を見開いたまま俺を見て言う。 「千ちゃん……これ……」 「そう、それは俺の筆跡だ。俺の字は特徴的だから周りにはこんな字を書く奴はいないだろうし、十中八九俺の字だ」 「……千ちゃんその漫画読んだの初めて? 初めてなら、昔持ってた人が偶然千ちゃんと字が似てたって事も……」 中越は混乱しているといった様子で俺に聞いてきた。 「そう、問題はそこだ。俺があれを読むのは二回目で、この前あの漫画を読んだ時にはこんな紙は入ってなかったし、第一俺はこんな事を書いた覚えは無いからな」 「……明日、写真部のみんなに見せよう?何か分かるかもしれないし」 中越がそう言ってくれるのは嬉しいが…… 「こんな紙切れだし、わざわざ部活のみんなを総動員する事もないだろう。まあ俺で解決するさ。 さあ今日はこれで終わりだ。もうだいぶ遅くなったし家まで送ろう」 これ以上言うと中越は色んな人を巻き込みそうなので、無理やり話を切る。 「うん……」 中越は釈然としない顔を向けてきたが、俺が歩き出したことで慌てて付いてきたのだった。
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