いつか帰るところ

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「鍵がかかってたんで、ちょっと乱暴させてもらったよ」 とうとう来た。 シスターのおでましだ。 メアリー、あなたは子供たちを。 目配せで合図する。 メアリーは頷き、速やかに移動する。 「静かだねえ、いないのかい」 手下を二人連れ、ずかずかと屋内へ入り込む。 が、スネークだけが歩を緩め、何となく一人の手下に隠れる。 途端、銃声。手下が呻き声を上げる。 見れば胸から血。 撃たれた。 「いるんだね、キャット」 返事はない。 だが、確実にいる。 スネークは残った手下に指示を出す。 お前はババアを探せ。私はキャットを殺る。 スネークは銃を取りだし、物陰に隠れる。 キャットの真骨頂は潜伏。 この状況は私に不利だ。 だが、外はもう太陽が昇り、屋内にも陽が差している。 最悪の状況だけは免れた。 何とか奴を見つけるか、ババアもしくは子供を人質に取るしかない。 そう企んでいた矢先、再び銃声。 そして鈍い物音がした。 …人が倒れる音だ。 恐らく手下が殺られた。 まずいか。 一度出直すか。 その頃、キャットはメアリーと合流していた。 子供たちも無事のよう。 しかし、メアリーの顔は青ざめている。 どうしたの。 あたしは問う。 1人いないの。 彼女は取り乱さまいと抑えているが、気が気でない様子は手に取るように解る。 待ってて。あたしが何とかする。 物陰から動けないスネーク。 どこからキャットが見ているかわからない。 軽率だったか。 そんな事を考えていた矢先、近くの扉の中から物音がした。 水を流す音。 その扉にはトイレの文字。 やっぱり神様は、仕える身を助けてくださるのね。 スネークの表情に生気が戻る。 案の定、開く扉から寝ぼけ眼で出てくる少年。 スネークは乱暴にその頭を掴み銃を押し付け、叫ぶ。 「キャーーット!子供を殺すぞ!」 そこにあたしが辿り着くのとそれは同時だった。 固まるあたし。 驚きと恐怖しかない少年。 嬉々とするスネーク。 「キャット、もう一度言うわ。自分の尺度でしか物事を計れない奴はバカなのよ」 同じ悪党なら悪い方が勝つのは当たり前。 銃を捨ててこっちへ来な。 吐き捨てるようにあたしに命令してくる。 スネークは銃を押し付ける手に力を込める。 少年が涙で潤む目でこちらをみる。 あたしは従う以外に選択肢がない。
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