いつか帰るところ

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違いないね。 ブローカーの男は肩を揺すって笑う。 一度奥の部屋に消え、再び現れる時にはその手に札束を持っている。 「ほらよ。今回の報酬だ」 キャットは受け取りざま、半分を男に渡す。 いつも悪いね。 男は懐に金をしまい、取り出したタバコに火をつける。 そう言えば。 思い出したように、煙と同時に口から言葉をこぼす。 シスター・スネーク。 キャットはその名に反応する。 「仕事がある。今やこの街のアイドルのシスター様が、何やらデカい事を企んでいるという情報がある。そいつの裏をとってくれないかという依頼だ」 乗ったわ。 キャットは即答する。 男は意外そうな顔をする。 「儲けは薄いし、依頼元も堅気のクチだぞ」 いいのよ。 「明日までにシスター・スネークのアジトを調べてちょうだい」 残り半分の札束を男に投げ渡す。 そのまま立ち去るキャットの背を、男はため息をつきながら見送った。 ――――――― 翌日。 街外れにあるさびれた修道院。 あたしはそこに潜んでいた。 本当に修道女のようね。 でもどういう事かしら。 この修道院そのものが犯罪組織なのかしら。 シスター・スネークは間違いなくこの修道院に務めていて、その居室も難なく発見することができた。 …本当にここがアジトなの? 疑いながらも、あたしは部屋に忍び込む。 中はやはり殺風景な普通の居室。 一般のシスター達の部屋と何ら変わらない。 ハメられたの… そんな疑惑すら浮かぶ。 取り敢えず物色しよう。 ベッドの脇にある小さな机の引き出しを開けてみる。 そこには複数の書類が。 これは… 施設の譲渡書類、土地の登記の写し… ハミルトン孤児院…? そしてその奥にあるもう1つの書類。 それが目に映った瞬間、あたしは自分が青ざめるのが分かった。 「あんたかい、ホットウェルを殺ったって奴は」 ハッと振り返ると部屋の入り口に誰かいる。 見つかった。 銃を出そうとするが、相手の方が早い。 「ジタバタしないでよね。何もあんたを殺そうってんじゃない」 こいつがシスター・スネークに間違いないだろう。 マズイ。この流れ。 あたしは完全にハメられている。 「テストみたいなもんよ。私は今すぐこの街が欲しい。それを速やかに達成するには、地元に詳しくて腕の立つ部下が必要なの」 スネークはニヤリと笑う。 最高の逸材じゃないの。
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