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---そこを。 家、部屋、総じて“生き物の住む場所”と称してしまって良いのだろうか。 それとしては乱れきった環境で、とても生物……もとい人間が住めるような場所では無い。 元はとても美しい部屋だったのだろう。 散乱し天井寸前積もりに積もったゴミ袋の山、その隙間からは完全な白が伺える。 恐らく、その白は壁だ。 それと比べて、床は黒い。 それは人知を越える黒さ。 どうしてその黒を表す言葉は見つからない。 漆黒ではない。 闇ではない。 とてもとても表せる言葉は見つからない。そう、やはり人知を越える。 人間の理解の範囲外である。 どう形容すれば良いのか、しかし表さなければ現状を語れはしないだろう。 それは色でこそあれ我々の世界には本来無いものなのかも知れない。 その黒の中にぽつり、生物を置いてみよう。 何が作用するのか生物はたちまち自らの居場所を失い、命を絶つだろう。 とにかく、それは正体の無い黒。 色と言う概念が無い場所……そこにある“無色”と言う色なのかも知れない。 そしてゴミ袋の中には何が入っているのか。 一々一々話し声が聞こえる。 その中に閉じ込められたように。 それは世界の中で示唆されたヒントを辿り、世界の真理に気付いた愚か者の声。 鈍く、薄く、低く、高く。 言葉や先入観、本質に囚われない声。 生物の耳にどう届くかは分からないが、理解の外を越えたそれを音や声として認識すれば発狂してしまうのは必然だろう。 拙い言葉が成し得る形の本質は、きっとそれらとは別の次元が作り出したものだ。 言葉の意味や形、数や無限等と可能性を締め括り抑えた先入観では到底理解し得ない。 無限と言う意味を越えた無限の有限。 または逆も然別。 言葉と言う鎖を繋いだままでは、この黒や声は理解できないのかもしれない。 この部屋には、入口は無かった。
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