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「…夕貴」 ほらね、夕貴に【おとこおんな】なんて言われても全然悲しくない。 「ってかまだ単語やってんのかよ~。しょうがねえよな、0点だし。」 と笑いながらあたしの席へ近づくと、ようやく夕貴はぼんやりと空を見ている深谷の存在に気づいたようで。 夕貴の視線を感じたらしい深谷はハッとした様子で、 「……僕、帰るね、芦川さん」 と小さく言ってバックを持ち足早に教室を立ち去った。 「…なんだあいつ、根暗なやつだな」 「うちのクラスの深谷だよ?あんた2ヶ月経ってまだクラス全員覚えてないの」 「え…ああ、そんなやついたっけ?地味なやつは顔覚えらんないんだわ俺」 笑いながら言うこいつにあたしは呆れた。 あたしはみんなと仲良くしたいから一週間のうちに全員の顔と名前を覚える。 でも夕貴はどっちかっていうと深く狭くってタイプだから覚えるのに努力しない。 しかも深谷はどういう訳か只でさえ薄い存在を更に薄くすることが出来るらしく、正直夕貴が覚えていないのも無理はない、気がする。 「…帰ろーぜ、たまには一緒に」 「ん、待って。あと30個」 急げーと夕貴が棒読みであたしをせかす。 なんか考えているのだろうか? 「(深谷…あいつは、もしかして…………そうだったら絶対負けねえ)」        
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