*旅立ち*

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─カララン 店のドアに付いているベルが鳴って、店に人が入って来たのを知らせた 『いらっしゃいませ』 私は入って来た客を迎えた 「おや… あなたは…」 『あ、ゼルダさん…』 入り口には ゼルダさんがキョトンとした顔で立っていた 「…何をしてるのですか?」 『え? …あぁ、バイトを…』 「………」 ゼルダさんが 不思議そうな顔で私を見た 「…何故バイトをしてるのですか?」 「私は既に仲間と旅立ってるのだと思いましたが…」 言って ゼルダさんはテーブルに付いた 『…それが 仲間を雇おうとしたら凄く高いので…』 『バイトして お金を稼ごうと…』 「………」 ゼルダさんは 驚いた様に目を丸くしたが、直ぐに優しい笑顔を見せた 「あなたは 勇者なのですよ?」 「タダで雇える筈です」 「自分が勇者だと言わなかったのですか?」 ……… い、言える訳無いじゃん だって 私、全然勇者らしくないもの 「………」 「城からの伝達も来てない様ですね…」 「…おかしいな」 ─カララン 再びベルの音がしてドアが開いた 「ちわー」 姿を表したのは ルナだった 「…ん? 何でお前がいるんだよ」 ルナは 私を見ると言った 「おばちゃん いつもの頼むね」 「あいよ」 私の返事も聞かず ルナはテーブルに付く 「ルナ ちょっと頼まれてくれないかな」 ゼルダさんが 優しい笑顔をルナに見せる 「…嫌だね」 「まだ何も言って無いよ」 「どうせ この女の面倒を見ろとか言うんだろ」 ルナは 私を指差した 「ピンポン 当たりだ」 「……当たりかよ 当たりたくなかったよ」 「やだね ごめんだ」 「さっきだって こいつのお陰で死にかけたんだから」 ルナは私を指差す 『わ、私だって あんたとなんか嫌だよ!!』 「そりゃ 良かった」 「ルナ 言葉を慎みなさい」 「この人は 勇者さまですよ」 ゼルダさんの声にルナは顔をあげる 「…勇者? 誰が」 「この方ですよ ルナ」  
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