姉貴

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『おはよ!… げ、朝からパスタかよ!』 ボクは母親の顔を知らない。 もともと母は体が丈夫なほうでは なかったうえに、子供が出来にく い体質で、23歳のときに同じ美 容師だった父と結婚し、12年間 子供が出来なかった。 『さっさと食べないと遅刻するわ よ!』 『猫舌なんだよ!』 『とっくに冷めてるわよ! それ、冷たいパスタですから!』 35歳で初産 “僕たちの宝物!” 父は体の弱い母を気遣って、二人 目は作らないつもりでいたらしい が、一人っ子はかわいそうだよ… 母のたっての希望で、二人目がさ ずかることを、こころまちにして いた。 待つこと10年… 母45歳、父47歳の時… 天使が…あ、ボクね、生まれた。 『ジュン、歯ブラシ取り替えても いい?』 『いいよ! 棚の中に入ってる! アンタまだ着替えてないの!? 遅刻するよ!』 『大丈夫! チャリこぐのメッチャ早いし!』 『まったく、誰に似たんだか… 海に落ちないようにしなよ!』 『げ! 知ってたの!?』 『あたりまえだろ! 新しい通学路は家を出て左、古い 通学路は家を出て右! アンタは右に行ってんでしょ!』 『だって近けーんだもん…』
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