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『あ、あ、あ、ありがとう…
ところで…キミ誰?
この辺の子? 何歳? 名前は?
ここで何してたの?』
『すごい質問の数ね…』
『あ、ゴメン! 自己紹介だね…
ボクは、山越ミチル…
あそこの高校の1年生! 野球部
に入ってる!』
『ふ~ん、ミチル…
アタシの名前は…つばさ…
言えるのはそれだけ…』
『つばさ…さん…』
『さん…なんていらないわ!
あなたと同年代よ、たぶん…』
『たぶん? 16歳?』
『ここ、風がキモチいいね!』
ボクの問いには答えず、つばさは
またアルプスの先端に立った。
『ここはアルプスって言ってる…
このあたりの人はみんな…』
『アルプス?』
『うん! ど~んなに暑い夏でも
ここだけはなぜか涼しいんだ!
だからアルプス!』
『へぇ…アルプスか…』
『あ、危ないよ! そんなに先に
行ったら! しかも裸足!?』
『平気! アタシ飛べるから!』
つばさは振り返ってウインクしな
がら両手をボクに差し出した。
『来て!』
ボクもここは好きだけど、さすが
にあんな先端に立ったことは一度
もない。
『ミチル! 来て!』
つばさにそう言われた瞬間、ボク
は自分の体が自分の体ではないか
のように、つばさの透き通った瞳
に吸い寄せられた。
つばさの手を取った。
夏なのに冷たい手…
『行くよ!』
つばさがそう言った次の瞬間…
二人の体が宙を舞った。
『う゛ゎ゛ぁ゛~!』
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