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あの虎の件から数日後。
うちは土方さんの部屋の掃除をしていた。
土方さんは煙管をふかしながら、書類を書いている。
ありきたりの、普通の光景だ。
「土方さ~ん」
スッ。
「あ、沖田さん」
沖田さんが部屋に入って来た。
「…総司…入る前に一言言えって、いっつも言ってるよな?」
「良いじゃないですか、別に。私と土方さんの仲なんですから」
沖田さんは土方さんの正面に座った。
土方さんは、深々とため息をつく。
「で、何か用か?」
「佐々木愛二郎の事なんですが…」
うちは掃除をしながら、聞き耳を立てていた。
「近頃稽古に来ないんですよ」
「え!?」
うちは二人の方を振り返った。
「沖田さん!それって本当なんですか!?」
「うん…」
……………。
信じられなかった…。
誠実で純粋で一直線な性格の彼が、稽古に出てないなんて…。
いつぞや、『武士の出ではない自分に対等に稽古をしてくれる沖田先生が憧れだ』と話してくれた。
彼が沖田さんの居る稽古に出ないなんて、有り得なかった。
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