伊豆の流人

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佐さまは安達くんから手紙を受け取ると、 「四郎。上がってゆきなさい」 と微笑を浮かべて、 「すぐに返事を書くから、少し待つように」 そう言って、手紙を開封した。 四郎は、大失敗で落ち込んでいたけど、 佐さまに優しい言葉をかけられると、 (なんか元気が湧いてきた!) うれしくなって、 「は、はい!!」 と明るい表情で答え、 「お邪魔しまーす」 と上がりこんだ。 安達くんが、あわてて盥を用意し、足を洗ってくれる。 「やあ、悪いなぁ」 「しかたない。佐さまが家にあげたら、それは、お客様だからな」 「あっ、あとは自分で洗うから……!」 四郎は、ちょっと顔を赤らめて、安達くんの手をどけた。 丁寧に足の指先まで洗ってくれる安達くんの首から肩にかけての線……それをなにげに眺めているうちに、くすぐったい気持ちに襲われて、四郎は恥ずかしくなった。 「そうか。じゃ、あとは自分でやりな」 安達くんは、濡れた手を無造作に腰で拭きながら笑った。
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