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綱海は手すりに手をかけ、夕日を見ていた。
ピンク色の髪がオレンジに染まり、綺麗だ。
私達はそのまましばらくの間ぼーっとしていた。
静寂を破ったのは私。
「隣、いい?」
「お、おう」
私は階段を駆け上がり、綱海の横にいった。
「みんな、帰っちゃうんだね。もちろんアンタも……」
「あぁ。」
私達の間に沈黙が訪れる。
どうしよう、何か言わなきゃ。
すると私はまだ綱海にチョコを渡していないことに気付く。
今日はバレンタインデーだったのだ。
雷門中のみんなにはもうチョコを渡したが、綱海には渡しそびれていた。
よし!
私はバッグの中のチョコに手を伸ばした。
「あのさ、綱海。今日バレンタインじゃん。
雷門中のみんなにはもうチョコあげたんだけど、
まだアンタにはあげてなかったよね。だから、これ!!」
私は綱海にチョコを差し出した。
「えっ」
綱海は驚きながらも、私のチョコを受け取ってくれた。
「それ私の手作りでさ。不格好だし、不味いかもしれないけど、一生懸命作ったんだ。」
綱海はまだ驚いているようだったけど、
すぐにこっちを向いて、こう言ってくれた。
「ありがとな!(ニコ)」
あ、笑顔…………。
優しくて、温かくて、まるで太陽みたいだ。
もうこの笑顔がみれなくなるのかな……………
気付いたら涙がひとすじ頬を伝っていた。
びっくりした。
綱海もうろたえていた。でも止めたくても止められない。
私は逃げ出した。これ以上泣いている所みられたくなかったから。
綱海が私の名前を呼んでいる。
だけど走り続けた。
綱海は追って来なかった。
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