僕の世界と赤い紙。

1/1
前へ
/61ページ
次へ

僕の世界と赤い紙。

君から赤い紙が入った封筒が届いた。 どこか生臭い紙だ。 文字は書かれていない。 ただ差出人名義に殴り書きで君の名前が記されている。 気になるのは君が意図する内容と紙から漂う生臭さ。 外では犬が吠えている。 僕はカーテンを開け、昼間にもかかわらず暗い空を見た。 左手に握った赤い紙が汗で滲む。 ふと思ったが、なぜ僕の足は地面から離れているのだろうか。 気持ちは落ち着いているのに体が不安定を感じている。 もう一度赤い紙を見て君の顔を思い出す。 今すぐに会いたいなんて思ってしまう。 そういえば封筒に殴り書きされた君の名前は君が書いた文字なのか。 再び犬が吠えてくだらない思考を中止する。 部屋の中に戻り、布団に潜る。 なぜかとても幸せで憂鬱だ。 このまま寝てしまおう。 赤い紙を握り締めたまま。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加