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ヒュンッ───と耳もとを何かが通過する音がした。
彼女は地味な眼鏡ごしに耳元のそれを横目で見やる。
なんのことはない、黒光りした抜き身の日本刀が、耳元を通り過ぎたあとだったようだ。
「ひっ…人殺し!」
この年ごろの女の子としては、声を出せただけでもたいしたものだろうが、一方、その声を聞いた少年は、けだるそうに刀の先を見ていた。
「ねぇちゃん、人殺したぁ随分だねぇ。それは、後ろをみてからいったことなんかい?」
「う…後ろ?」
「そぅ、う、し、ろ」
この場合、おきまりなのがだいたい真後ろに予期せぬ悪しき何かが、いるのだろうと、彼女は悟り、おきまりのように徐々にゆっくりと後ろに振り向く自分に気付くことなく振り替える。
そしていた。
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