6人が本棚に入れています
本棚に追加
カンカンッ
「はぁーい!」
ルチルが昼食の仕度に取り掛かろうとした時、玄関から来訪者を知らせる独特の音がした。
ルチルは一旦仕度を取り止め、エプロンを脱ぐと玄関へ走って行った。
「お待たせしてすみません!えっと…」
「おや?」
ルチルが扉を開けると、そこにはすらりと背の高い青年がいた。
ルーヴェほどではないが長い髪は薄いブラウンの中にピンク色のメッシュが前髪に一束、左右に一束ずつ施されていて、長い前髪を分け現れている瞳は紅に近いピンク色をしている。
青年は外したままの形で右手に持っていたサングラスを折り畳み鞄に入れると、ルチルの顔を見て再び首を傾げた。
「ここってファントミューレ伯爵の屋敷だよね?」
唐突な質問にルチルは慌ててうなずいた。
「は、はい!えっと、貴方は…?」
ルチルのそんな当たり前の問いに青年は驚いたように目を見開いた。
「俺を知らない子もいたんだな…」
そう呟くと青年は美しい笑顔でルチルに言った。
「俺はリトリーヴァ・フィオドールっていうんだ。リトでいいよ。ルーヴェの友人だ」
「そうでしたか…!失礼しました!あ、ではどうぞ中でお待ちください。ルーヴェ様にお知らせしますので」
「あぁ、ありがとう」
ルチルはリトを客室に通すと、紅茶とお菓子を出してルーヴェの部屋へと向かった。
コンコンッと扉をノックするとすぐにルーヴェは出てきた。
「どうしたルチル?昼食か?」
「あ、昼食はまだ…ルーヴェ様にお客様が…」
「我に客人…?名は?」
「リトリーヴァ・フィオドール様です」
「何だって!?リトが!?」
「はい、客室にお通ししてお待ちいただいてますので行きましょうか?」
「あぁ!」
いつになく嬉しそうにルチルの手を取るルーヴェにルチルは微笑み歩き出した。
客室に着いたルーヴェを見ると、リトはぱぁっと顔を輝かせて立ち上がりルーヴェに抱き付いた。
「久しぶりルーヴェ!」
「リト!本当にリトなんだな!?」
ルーヴェも親しみの籠もった口調でリトの背中に腕を回した。
英国ならではの挨拶だ。
最初のコメントを投稿しよう!