赤い記憶と銀の出会い

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ゆっくりふわふわと降り積もる雪は道を白く染め上げ、辺りの音を吸い静寂というヴェールで包む。 その中を歩くのは静寂を破る愛らしい笑い声の幼い少女とその小さな両手を優しく包み込み微笑む両親。 誰が見てもごく普通の幸せそうな家族。 少女は両親の手を離し駆けてゆく。 笑顔で少女が振り替えれば母親譲りの輝く金の癖っ毛が揺れ、父親譲りのエメラルドの様な瞳が弧を描く。 「おかあさまぁ!おとうさまぁ!はやくはやく!」 急かす少女に両親は微笑み歩みを早める。 と、少女は何かにぶつかり尻餅をついた。 「ふにゃっ…ご、ごめんなさい!」 見上げた少女の瞳に映ったのは銀色の髪の奥に潜むルビーの様な瞳… 刹那、………―― 上がる悲鳴と飛び散った紅… 少女は両親が自分を庇う様に抱き締めたまま紅に染まり動かなくなっていることに気がついた。 「おかあさま…?おとうさま…?」 小さな手でどんなに揺すっても両親の瞳は永遠に開くことはないのだ… 幼いながら悟った少女の瞳から次々と涙が溢れ、降り積もる雪を溶かし紅を滲ませてゆく。 「君を…」 銀色の髪を瞳と同じ紅に染めた長身の男は少女に写真を渡す。 少女は涙で濡れた瞳を写真に移し、男に戻す。 「私の息子、ルヴェンナの許婚に…名前は?」 「な…まえ…?」 「君の名前だよ」 「ルチーナ…」 「ルチーナちゃんか。その写真を手放してはいけないよ?」 「ル…ヴェンナ、くん…?」 「そう。詳しいことは君が16歳になるその日まで…」 男はそう言うと少女の額に手をかざし小さく何かを唱えた。 少女の記憶はそこで途絶えることになる…
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