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「どこまで行くんだいお嬢ちゃん!」
「ファントミューレ伯爵のお屋敷までなんだけれど大丈夫ですか?」
「ファントミューレ?あぁ、ルヴェンナ公の所かい!?」
「はい!」
汽車から降りてゆっくりと歩いていたルチルにトラックで野菜を運ぶ途中らしきおじさんが声をかけてきたのでルチルは町の人々との交流も大切だと思い会話を試みたのだった。
「だったら送ってくよ!乗りな!」
「ありがとうございます!」
ルチルはトラックの助手席に乗り込んだ。
「いや~、見かけないべっぴんさんが歩いてんな~って思ってよ!」
「ふふ、そんなことないですよ~。おじさんは野菜を作っているんですか?」
「おうよ!この街に運んでんだ!」
「そうなんですか!」
「おっと、着いたぜ!」
おじさんの言葉にルチルは外を見ると、目の前に大きな洋館があった。
「ありがとうございます!」
「いつかうちの野菜食べてみてくれな!この街の市場に並んでっから!」
おじさんに笑顔で返事をすると、ルチルは洋館の扉を鳴らした。
「すみませーん…!」
しかし返事がなく、扉に手をかけると鍵がかかっていなかった。
「えっと…」
ルチルが扉に手をかけたまま迷っていると、突然後ろから声をかけられた。
「この屋敷になんの御用かなお嬢さん?」
「ひゃあ!!」
ルチルが驚いて振り返ると、碧い瞳と重なった。
「あっはっは!!そんなに驚かないでよ!…で、何かあるのかい?この屋敷に」
「あ、あの…ここはファントミューレ伯爵様のお屋敷ですよね?」
「ルーヴェに用が?…名前は?」
「えっと、ルチーナ・エミューストと申します。ルチルとお呼びください。貴方は…?」
「おっとこれは失礼!俺はアディール。アディール・レントラントってんだ。エディって呼んでくれな!」
エディと名乗る長身の青年は肩で切り揃えられた黒髪を揺らし笑った。
「エディ、様?」
「そ!あ、で本題!ルチルちゃんは一体何の用で?」
「…ファントミューレ伯爵様に、と、嫁ぎに参りました…許婚です…」
顔を真っ赤にしてそう答えたルチルにエディは目を真ん丸にし、そしてガッとルチルの肩に両手を置きぱぁっと輝くような笑顔で言った。
「そうかそうか!!君がルーヴェの言っていた!あぁ成る程!ってことは今日が誕生日!おめでとうルチルちゃん!」
「え、あ、ありがとうございます…!」
「さぁさ入って!」
エディはルチルの背を押し屋敷に招き入れた。
そして扉を閉めるなり大声で叫んだ。
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