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夜。全てが闇に包まれ静まり返る時…。
パタンと戸のしまる音と共に入ってきたのは黒髪を肩のラインで切り揃え、碧い瞳をした青年、エディだ。
「ルーヴェ?いる?」
「あぁ」
長く美しい白銀の髪を揺らし、その青年は紅い瞳をエディに向ける。
「ルチルちゃん、寝た?」
「寝た」
「そう。ならよかった…大丈夫?保ちそう?」
「…………」
エディのそんな問いにルーヴェは口籠もった。
エディはルーヴェの正面から肩を掴むと顔を覗き込んだ。
「今日は行かなくていいの?“ご飯”に」
「いい。今宵はいらん。ルチルが心配なのだ…」
「え?」
「ルチルはなんだかうなされているようなのだ…我は一体どうすれば…」
目を伏せるルーヴェに対し、エディは目をぱちくりさせて首を傾げた。
「そんなの、抱き締めてあげればいいじゃない」
「簡単に言ってくれるな!我とて、できるならそうしている…」
“できるなら”…
「エディ。我は臆病者だ…」
エディは悲しげに眉を下げ、ルーヴェを抱き締めた。
「ルーヴェ…でもさ、やっぱり一歩ずつでも進まなきゃ…怖いのは、仕方ないよ…」
「エディ、我はルチルに……」
「ん?」
「ルチルに…愛してもらえるだろうか……」
広い洋館の一室で館の主の悲しい呟きを、闇は静かに吸い取った…
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