0人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日、ザイルの額は腫れが引き押えると痛いくらいで見た目に支障はきたさないくらいになっていた。イールが朝から泣いて喜んだということは言うまでもない。
イールとザイルは正午に近い時間から噴水の縁に座り待っていた。
二人はローブを小脇に抱え、割とラフな格好だ。
街は意外と小規模なため街の人間ではない二人は目立った。
「兄さん、僕もう嫌なんだけど…」
「ん~?仕方ないよ俺達ここの人間じゃないもん!それに~」
「それに?」
首を傾げるザイルの鼻先を人差し指でつんっとしながらイールはにんまりと笑って言った。
「お前女顔でかわいいから♪」
「…………っ!」
瞬間、バチンッと痛々しい音が鳴り響いた。
「いったぁああ!!」
「僕は男だ馬鹿!!」
「別に女だなんて言ってないじゃん!女顔だって言っただけで!」
「それだって充分失礼だ!」
美しい顔立ち故にただでさえ目立つ二人が口喧嘩をしている光景は周囲の視線を集めた。
「イールさんとザイルさんは一体…?」
一方、ジョンとマルクはイールとザイルを探して噴水の周りをうろうろしていたのだった。
「ねぇジョン、あの人だかりはなんだろう…?」
「ん?うーん…聞いてみっか!」
ジョンはそう言うなり近くにいた青年に声をかけた。
「あの、すみません」
「なんだい?」
「あの人だかりは何なんですか?」
「あぁ、あそこでとびきり美人な二人が口喧嘩してるんだ」
「とびきり、美人…」
ジョンの中に思い当たる節がいくつかあったので、ジョンはマルクの手を引いて人だかりの中に入って行く。
すると、ジョンの予測通りイールとザイルの姿がそこにはあった。
「イールさん!ザイルさん!」
「こんなところで何してるんですか?」
「あぁ!ジョン君マルク君!ごめん!探した?」
「えぇ、まぁ…」
しかし、ジョンとマルクが見た時二人は喧嘩などしておらず女性男性問わずに囲まれて困っていただけだった。
「あの!俺達この子達を待ってただけですから!」
「どいて下さい!」
最初のコメントを投稿しよう!