第1夜

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「うん。沢山いるねぇ…犠牲者が」 「そうだね…」 イール達の周りを取り囲むように何かが現れた。 それはもはや人とは呼べない姿をした化け物だった。分かりやすく言うならゾンビのようなものだ。 「さて、と…やりますか。本体を殺ってDOLLを持って帰らなきゃなんないしね」 「うん。そうだね」 イールとザイルが今まさに戦おうとした時、悲鳴が上がった。 「うわぁぁああああ!!!!!」 「た、助けてぇ!!」 「!ジョン君!マルク君!どうしてここに!!?」 イールは悲鳴のした方を見て叫び、ゾンビに囲まれ縮こまってしまっている二人のもとに駆け出した。 「ザイル!お前もこっちへ!」 「わかった」 イールは二人を囲うゾンビを蹴散らし二人を見た。 「どうしてここに来た!?」 「ご、ごめん、なさ…」 「幽霊が、まさかこんな…」 怯えきっている二人をこれ以上責める訳にもいかず、イールはため息をついて言った。 「いい…君達が悪いんじゃないから…悪いのは大人だな」 「子供は好奇心が強いから秘密にするのは逆効果だ」 「あぁ…いいかい?君達今度言うことには従ってね?」 「は、はい…」 「君達はここから一歩も動かないこと。それからザイルの指示に従うこと。いいね?」 「わかりました…」 イールは苦笑してザイルを見た。 「と、いうわけでここは俺がやるからザイルはシールドを頼むよ」 「わかった。兄さんはいつも通りやっていいよ」 「ありがとう!じゃあよろしく!」 「うん。さぁ君達、僕の周りに来て」 「はい…!」 「あぁそうだ!これが終わったらちゃんと説明してあげるよ!DOLLのこと!」 ゾンビ達に向かって歩きながらイールはそう言った。 そして、懐から先程の十字架を取出し指で真上に弾き飛ばした。 途端、十字架から金色の光が溢れ出し重力のなすがままに落下した。 イールは落下する十字架に向かい両手を伸ばす。 すると十字架はイールの両掌の間で落下をやめ、輝きを増した。 イールはそのまま十字架の上下に掌を動かし、上の掌である右手をすっと横に滑らせた。 「碧き月夜に祈れ、碧月王子(ロナンシス)」 イールがそう唱えた途端、光は爆発しイールを包み込んだ。
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