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「碧き月夜に祈れ、碧月王子(ロナンシス)」
そう唱え、光に包まれたイールの姿が次に見えた時、イールの外見に変化があった。
イールの手に十字架はなく、代わりに大きな剣をその手に持っていた。
そしてイールの右目に上下対象のワインレッド色の紋様が現れ、口にも同じくワインレッド色のルージュがひかれ、そしてイールの両こめかみに牙をかたどったような飾りが付いていた。
その妖美な姿に見惚れていたジョンとマルクはカツリとイールが一歩踏み出した音にはっとした。
イールは剣を構えることなくすっと自然体でゾンビ達を見つめ、にっと笑った。
「さぁ碧月王子」
「そろそろだね…」
イールの言葉にザイルがそう言い懐から水晶のようなものを取り出した。
ザイルがそれを胸の前に掲げた時、イールの口が言葉をつなげた。
「食事の時間だ…」
それが、合図だった。
イールはたんっと地を蹴り、大きな剣をまるで枝でも振るうかのように軽々と滑らせてゆく。
「始まったね。それじゃあ僕も…ジョン君、マルク君、二人共吹き飛ばされないように頑張ってね」
ザイルはそう言うなり掲げた水晶をふっと手から落とし持っていた手をそのままゆっくり胸の延長線上に滑らせていく。
「闇輝見出だし両を共に跪かせよ、輝闇妃(セビロクリダット)」
水晶が地に落ち砕けるかと思われた刹那、水晶は地面に溶け込み、ザイルの足元に白と黒の紋が浮かび、そこから光が吹き出しザイルを包み込んだ。
巻き上げるような凄まじい風に飛ばされないようジョンとマルクは互いに手を握り踏み留まった。
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