第1夜

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「ジョン君、マルク君、無事かい?」 「う、あ、はい!」 「大丈夫です…!」 ザイルの左目にはイールと同じ紋様が薄い藤色で描かれ、ルージュを同じく薄い藤色。そしてザイルの両こめかみには蝶をかたどった飾りが付いていた。 「じゃあ僕から離れずそこを動かないでね」 「はい!」 ザイルは両手を前に出し右手で何かを宙に描く。するとザイルの指が通った箇所が白く輝きその描かれた紋様を浮かび上がらせる。 「白き妃の抱擁(ブランカレイムヘールエンボルベール)」 ザイルがそう唱えると紋様からドーム状に光が溢れ、三人を包み込んだ。 「あの、これは?」 「シールドだよ。君達を守る為の、ね」 「これが…」 「すごい…」 ザイルの言う通り、三人を包み込んだシールドにゾンビ達から飛び散る血液等が遮られている。 「あ~人数多すぎる~!!めんどくさいし汚れるし~!!総隊長なんでこんなんなるまで放っとくの~!?」 ゾンビ達の中からイールの不満が聞こえ、ザイルははぁとため息をつくと再び宙に指を滑らせた。 先ほどとは異なる紋様が浮かび、ザイルの手に納まったとき、それはピンポン玉ほどの大きさの光の塊となっていた。そしてザイルは 「兄さんこれあげるから頑張って~」 とその玉をイールに向かって投げた。 「へ?あ、っておおい!!なんでそっちに行くの!?」 「…………」 「…………」 「…………」 イールの並外れた身体能力が幸いし、玉をキャッチできたものの、ザイルが投げたその玉はイールのいるところからかなり離れた位置に落ちていったのだった。 「僕は身体能力の代わりに頭脳をもらってしまったからね」 さらりと言いのけたザイルに送るジョンとマルクの視線は複雑なものだった… 「おいぃ!!でも、まぁいいや!サンキュー!助かった!」 イールはその玉を口にあてがい飲み込んだ。すると、イールの頭に付いている飾りから牙が一本外れ、剣に溶け込んだ。 瞬間、剣から光が溢れイールの体からも同じく金の光が溢れた。 「おお!パワーアップ!これでこいつらも…」 イールが剣を一振りすると、先ほどまでイールを取り囲んでいたのが嘘のようにゾンビ達が消し飛んだ。 「このとーり一発!!」 剣を鞘に納め、ザイル達の元まで歩きながらイールは手にした淡い黄緑色の光を放つものを掲げて笑った。 「DOLL回収完了♪」
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