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彼は末 一馬。私の唯一の弟……。
いやそれはただの私の思い込みで、本当はただの幼なじみ。幼い頃はよく一緒に遊んでいたものだ。
そんなカズの目はまだ空ろ(ウツロ)とした状態で、取り敢えず声をかけてみたものの反応がない。
このままにしておくのも心配だから彼を家に連れて行くことにした。
どうせ私以外に誰も住んでいないから誰にも文句一ついわれる心配はなかったから……。
起こすにも重く、言っても立とうともしないから引っ張ろうと手を握った。
相変わらず大きい… 彼の手は小さい頃から変わらない大きい手だった。
手を繋ぐとカズは自然と立ちあがり、酔っ払った人みたいに体の重芯が定まっていないながらも私の手を頼りに家まで離さずに付いてきてくれた。
「懐かしい‥‥」
そんな言葉が自然と私の口からこぼれでる。
昔もよくこうやって私は自分よりでかい手を引いてうちに連れ込んだものだった。
今も昔も私は変わっていないようだ。
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