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「志望校は?」
「私立綾崎大学(偽)」
「志望校は?」
「私立三千院大学(偽)」
「志望校は?」
「私立鷺ノ宮大学(偽)」
「志望校は?」
「私立橘大…「志望校は?」
俺は高二2月にしてまだ志望校を決めていない。
いつか時が来たら閃くだろうと放置プレイをしてから早二年。俺の元には、未だ、その時はやって来ていない。
仕方なく都市圏にある誰もが知っているであろう有名私立大学の名をあげたのだがすべて却下されてしまった。
それも今なら魔王でも殺せそうな鬼のような顔をして言われるのだから溜まったもんじゃない。手首の生死とか言う問題以前では無くなってきた。
そんな本日最大のピンチに奇跡が起きた。
「ただいま~」
グッとタイミングにダンボール箱を抱えた父さんが帰ってきたのだ。
ナイス父さん。あんた俺の女神様だよ。もうI love youだよ。
俺は透かさず父さんの元へ駆け寄った。
「父さん。お帰り。荷物持とうか?」「いや、重いから良い」
なんてあんたは優しいんだ。五十過ぎのあんたが十七の俺にそんなこと言うなんて誠実すぎにも程があるだろ。
父さんはそれを机に乗せるとお母さんからして右隣、すなわち俺にとっての左斜め前の椅子に座った。
父さん。今こそ、その誠実感を発揮して鬼を退治してくれ!!
「志望校は?」
「私……」
17歳8ヶ月。俺の左足と右手首はお亡くなりになった。
「良いものをあげよう」
俺は震えが止まらなかった。さっきまで優しかった父さんが悪魔と化していたのだから。
雑に破られたダンボールの箱からどっさりと出てきた赤い本が俺の目の前にある机を、そして視界を埋め尽くした。
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