病院

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次に目を開けた時、もう視界には、あのおじさんの姿はなかった。真っ白で、清潔感あふれる天井が広がっている。俺は、もう一度目を閉じて、あの感覚を思い出そうとしたが、それは叶わなかった。まるで時が止まるかのようなあの奇妙な感覚。なんだったのだろう。痛みのせいだろうか。痛み・・・・・・。そうだ。俺は車に轢かれたんだった。 少年はその重要な事実に実感が持てず、よろよろと額に手をやった。額に固く巻きついている包帯のやわらかな感触が指先に伝わり、急に現実味を帯びてきた。
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