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重苦しい雨が降りしきる鈍色の月曜日は、僕にとって憂鬱以外の何者でも無かった。
電車が行ったばかりの線路に、激しい雨が格子をかける。
鳥小屋の中から見た風景とは、きっとこんな感じなのでは無いだろうか。
そんなことを考えてしまうほどに、僕が今存在している空間は閉塞的で、息苦しかった。
「まったく、凄い雨だねえ」
不意に、無機質な雨の音の間隙を縫って、凛とした女性の声が響く。
振り向いた僕が目にしたのは、湿ったセーラー服を肌に張り付かせ、長い黒髪からポタポタと雫を垂らしてベンチに座る、僕と同じくらい――十八歳くらい――の少女だった。
「いやー。参ったねこれは。まさか今日に限ってこんな雨が降るなんてね」
大きな口を開けて笑う少女は、こんな憂鬱な気候の中で、何故だかとても輝いて見えた。
「まあ座んなよ。濡れたベンチで良かったら」
少女が、ポンと、自分の脇の席を叩く。
この駅は壁の上部が広告看板になっていて、雨の日などは、その隙間から雨粒が吹き込んできて、ベンチをびしょ濡れにしてしまう。
今日もその例に漏れず、オレンジ色に輝く木製のベンチにはうっすらと水溜まりが出来ているのだが、彼女はそれを意にも介さずに、そこに座っていた。
既にずぶ濡れだから関係ないとでも言うのだろうか。
なんてことないようで全く異常なその様子に僕は暫く呆然としてしまう。
だがこちらを見つめたまま、ちっとも逸らすことのないその瞳を見ていると、何かを話さなければならないような気がして、仕方なく僕はおずおずと口を開いた。
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