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「あーあ、また一年お預け食らっちゃったじゃん」
パシャッと雨のホームに横たわり、彼女が呟く。
「いや、来年はもう無いよ」
「えっ?」
「来年からね、ダイヤが変わるんだ。エアポート急行とかいう電車が走り始めるらしいよ。だから、もう今の時間の電車は二度と来ない」
僕の言葉に、彼女は一瞬きょとんとした表情を見せると、すぐさま大口を開けて笑い出した。
「アハ、アハハハハ! やられたあっ! おぬし、なかなかの策士よのう。アハハハハ!」
「言っただろ? 未来は動き続けてるんだ。僕らに関係なくね。だからたとえ君の未来は止まっても、君がいた世界の未来は動き続ける。影響を与え続ける。ミクの彼氏が、ミクの未来を動かしたようにね」
「君、語らせると止まらないタイプなんだね。私にはもうちんぷんかんぷんだよ」
「死ぬな。って言ってるんだよ」
「……りょーかい」
そういって、彼女が立ち上がる。
「ありがとう。今日、君に出会えて良かった。やっぱり君、名前のとおりビッグになるよ」
「君こそ、名前のとおり素敵な未来が待っていると思うよ」
馬鹿なやり取りをして、笑いあう。
重苦しい雨の格子の先に、広い世界が見えた。
――線路はどこまでも、繋がっている。
~Fin~
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