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「何だよムック君、えらく嬉しそうだな」
隣に寝そべっていたミットンが言う。
ちなみにあの日からムック君というあだ名は定着してしまっている。
「ちはるがいた」
ムックは名前を特別大切そうに発音した。
「…ちはるってチーボーちゃんのことか?!何やお前そんなに仲良くなったのか?」
「…悪いけど、渡さないから」
「うっ…、くそ、珍しいな、お前が譲らないなんて」ハハ、とミットンは笑ったが、ムックはチーボーの行った方向をじっと見つめた。
「死んだって誰にも渡すもんか」
「あ?何か言ったか?」
「別に」
春の麗らかな風が、ゆっくりと通り過ぎていく。
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