32人が本棚に入れています
本棚に追加
「お早うクニ!聞いて!ムックにドライブに誘われたの!」
朝9時30分、会うなりチーボーは幸せ全開でクニに報告する。
「よかったわねぇ、だけど、それだけのために私呼び出されたの?」
クニがちょっと呆れて言う。
「あっ、違うよ、今日の中国語予習一緒にやってもらえへんかなぁって…」
恐る恐るチーボーが聞いた。
クニはにっこりと微笑んだ。しかしその裏にはなにがあるやらわからない。
「そうなの。いいわよ。
よし、じゃあやろう。…しっかり教えるからね。」
クニは凄く頭がいい。
…ただし、教えるときは教育ママ顔負けのスパルタ。
チーボーはやんわり後悔したが、何とか付いていった。
「だから、違うでしょう。そこはこう発音するのよ。…聞いてる?」
しかしだんだんチーボーはムックのことを考えずにはいられなかくなった。
「何でムックは私なんやろ…」
チーボーがぼうっと呟いた。
「ちょっとチーボー!?…もー。
…いい?チーボーには良いところいっぱいあるのよ?元気で明るくてちょっと天然だけど頑張りやさんで。ムックさんもそういうことが好きなのよ。」
クニは一旦話を切ると、穏やかな笑顔になった。
「…ドライブいくんだって?勉強は後回しでいいわ。話聞くわよ。」
「えっほんまに!?わーもうクニ大好き!!」
その後チーボーはクニに、助手席でどうしよう、とか、事故にあったらどうしよう、とか、でもムックさんは絶対運転上手いから大丈夫、とか、言うことを嬉しそうに話しまくった。
いろんな話をクニはにこやかにじっと聞いてくれていた。チーボーはクニにとって、妹みたいな存在だった。
チーボー、うまくいくといいな。
…これは余談だが、そのあとチーボーは中国語の授業で先生にかなり褒められて、みんなの前で1ページ読むはめになったのだった。
「あと4日」
チーボーはその言葉をすっかり忘れていた。
最初のコメントを投稿しよう!