デート前夜

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次の日の昼、チーボーは何故かミットンさんに呼び出された。 待ち合わせ場所に行くと、ミットンさんはすでにいて、携帯をいじっていた。 「こんにちは!…今日はどうしたんですか?」 「おぅ、ちょっと話があってな。…食堂で話せるかな。何かおごるし」 「や、全然気にしないでください!大丈夫ですから!」 この間ムックにおごってもらったばかりで、何だか気が引ける。 「…おごらせてくれよ、ちょっとくらい。仮にもチーボーちゃんのこと好きなやつなんやからさ、断られたら寂しいやん」 ちょっと切なそうに言われた。…断れない。しかもそんなにあっさり、好き、なんて言われて、心臓がバクバクした。 食堂につくと、ミットンさんは半ば強引に、プリンとフルーツの乗ったパフェをおごってくれた。チーボーはせっかくなので美味しくいただくことにした。 「ところでさ、ムック、どう?」 神妙な顔で、ミットンさんは切り出した。 「えっ、どういうことですか!?」 ミットンさんは少し迷うように水を飲んで、言った。 「…正直に言うけどな、最近、というか、チーボーちゃんと付き合い出してからヤツ、なんかおかしいんや。…前からあんまりものを言う方やなかったけど、ここのところずっとボーッとしてて、なんか聞いても『あと2日』それしか言わへんし。今日は『あと1日』って言ってたけど、明日、なんかあるか?」 チーボーは驚いた。 とりあえず、ドライブに誘われたことを伝えた。 「そうか…。チーボーちゃん、ヤツは絶対に人を貶めるようなことはしない。やけど、明日は気を付けてくれ。嫌な予感がするんや。何かあったらすぐ連絡くれ。ま、俺の思い過ごしやと思うけどな!」 努めて明るく、ミットンは締めた。 「わかりました。私もムックさんのこと悪い人やと思いませんが、気を付けます。ありがとうございました」 「おう、俺が言いたかったのはそれだけや。…急がんでいいから、味わって食べや」 チーボーがパフェを食べ終えるまで、ミットンさんはムックさんとの面白い昔話を話してくれた。話の中のムックさんは、やっぱり素敵だった。 思い過ごし、やんね。
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