失踪

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………………… 一方、ミットンは家にいたが、朝から落ち着きなくベッドと本棚の間を行ったりきたりしている。 アイツの態度はやっぱり変やった。最後に会った時なんかは、俺のことなんかまるで無視やったし… 「いよいよだ」とかおかしなこといって笑ってた。あれはドラマなんかで最後に野望を遂げようとする黒幕の顔や。ドラマなら主役がこてんぱんにやっつけるけど…。 いやいやナイナイ。 …しかし、チーボーちゃん大丈夫やろか。 本棚の前で、『時空の旅人』という本の背表紙を、無意識に睨みながら考える。 ほんまは自分もついていきたかった。だけどこれはデートなんだから、そんなことは絶対にできない。そうや。当たり前やねん。 やけど…自分が「主役」になってやる。チーボーちゃんに何かあったら、お前と言えども容赦せんからなぁ! 半分ノリ、半分本気で考えて、ミットンは出かける支度を始めた。 ちょうどその時、携帯のバイブが鳴って、メールの受信を知らせる。ミットンはタンスを開けた手を止めて、携帯を開いた。 「…クニちゃんや」 どないしたんやろ。 メールには、 『今から話せませんか。チーボーのことで』 とあった。 ミットンは黙って携帯を閉じて、いそいそと着替え始めた。 可愛いクニちゃんに会える、不純な気持ちが無かったと言えば嘘になる。
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