失踪

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「や、クニちゃん」 あれから1時間後、ミットンは車をとばして大学に着き、談話スペースで本を読んでいたクニを見つけて声をかけた。土曜日とはいえ、授業もあるため人は割と多い。 「こんにちは、三浦さん」 クニちゃんは相変わらず女の子らしいな。ミットンは思った。 「すいません、突然呼び出したりして。でも昨日チーボーが言ってたことが気になっちゃって…」 クニは申し訳無さそうに頭を下げる。 「や、ええよ。俺もずっとそれが気になってたから。…あれ、その本て」 「えっ、あ、これは『時空の旅人』って本です。2年くらい前に流行ったんですが。読んだことあります?」 クニはミットンに表紙を見せた。 「おぅ、知ってる。さっき家で背表紙眺めててん。母さんが昔読んでたなぁ。俺は読んだことはないけどな」 「そうなんですか。わたし、2年前に読んだんですけど、なんか、無性に読みたくなったんです。そしたら…」 クニは本を一旦膝の上に置いた。 「そしたら?」 「あの、笑わないでくださいね。この中に出てくる主人公が、ムックさんと同じように『あと4日』って言ってるんです。それでやっと思い出しました。主人公は、自由に時間を移動できる。でも移動できるタイミングは限られているんです。だから数える。」 「ムックが違う時間から来たってこと?」 ミットンは目を丸くした。クニは恥ずかしそうに本を抱きしめる。 「すいません、きっと私、チーボーが心配すぎて訳わかんないんです。…ただ、気になって…。ちなみにこの本のラストは、タイムトラベルに失敗した主人公が、その時代の女性と結婚するんです。…その女性の名前「千春」なんです。 あ、すいません、本当に気になったとかそういうレベルなので!」
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