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「どうしたんですか?」
電話を切ったミットンに、クニは話しかける。心なしか疲れたように見える。
「あぁ…」
とだけ言ってミットンはまた黙ってしまった。
聞かない方がいいかと考えていると、ミットンがふいに口を開く。
「クニちゃん、今サークルのヤツから連絡があってな…。
あいつらの車が転落したらしい」
クニははっとして携帯を握りしめた。
「あの、それってこれのことですか?」
とさっきのニュース画面を見せた。
「あぁ…多分これや。今のやつはテレビ見とったらしい。名前まででたらしい。行方不明て、あいつら、一体どこ行ったんや。無事ならええけど…。」
クニはしばらく考えてから言う。
「…この現場、連れて行ってもらえませんか?」
「…危ないかも知れんで」
「大丈夫です」
チーボーと会うまでは、生きた心地がしない。待つのは嫌だ。
ミットンはたっぷり30秒は考えてから頷いた。
「よし、行こ。」
すると、後ろから誰かが声をかけてきた。
「あの、すいません、俺も連れてってくれませんか」
「ゴウ…なんや話聞いとったんか。」
ゴウ、と呼ばれた男はぺこりと頭を下げた。
「すいません。偶然聞こえてきちゃって…。あ、こないだサークル入ってくれたえっと…クニちゃんだよね、俺、2回生の森下 豪(モリシタゴウ)って言います。よろしく」ゴウは薄く笑って頭を下げた。クニも会釈を返した。
「俺、ミツヤさんのことほんまに尊敬してたんです。事故起こすなんてぜったいおかしいと思ってます。実際自分の目で確認したいんです。だから俺も連れてってください!」
ゴウは本気で頭を下げた。
「かまへん。ついて来い」
ミットンはふっと笑って承諾した。
「ありがとうございます!」
「よっしゃ、行くぞ」
3人はミットンの車に乗り込み、山を目指した。
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