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山に着くと、そこはさながらドラマの事件現場だった。…最も、こっちは現実なのだから切迫しているのは当然だが。
そこは落下した地点の上の道。曲がったガードレールが物々しい。
「君たち、何だね。」
警察官らしき人が、近づいてきた。
「…関係者じゃないならかえってもらうが」
「金月千春の友人です。」
前にすっとでて、クニが堂々と言うと、警察官は目を細めた。
「…本当かね」
「本当です。昨日、二人でドライブ出かけると言ってました。もし気が変わっていなければ、薄紫のパーカーに、デニムのスカートをはいてイヤリングをしているはずです」
そこで警察官は振り向いて、おい、と声をかけた。
「女性の方は薄紫のパーカーにデニムのスカートだ。…それか」
そしてもう一度クニを見た。
「気が変わっていたら?」
「多分、ジーンズにダボダボのパーカーです。いつもはその格好なので。」
「聞こえたか?書き込んでおけ。…協力ありがとう。
君たちは彼らの、つまり、津村光弥くんと金月千春さんの友人だと信じよう。
…彼らの行き先に心当たりはあるかい」
少し柔らかい口調で、警察官は言った。
しかし、クニは「信じよう」、という言い回しに、今まで信じていなかったのかと少しむっとした。
「何かやな感じですね」とゴウも呟いた。
「すいませんが、心当たりはありません。…あの、俺たちは車が見たいのですが、いいですか。何か手助けになれるかもしれません」
ミットンが言う。
警察官は悩む素振りを見せた。
「うむ…。
本当なら見せないと言いたいところだが。
まぁ、我々も手がかりがほしいからな。
見てもらおうか。危ないから私がついていこう。…こっちだ」
警察官の先導で、少し離れたところにあった、下に降りる歩道を下った。
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