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こんなところまで来たのは果たして正解だったのか、車を見て何かがわかるのか、二人は無事なのか…いろいろな不安で、クニはもう押しつぶされそうだ。クニは連絡がくるかもしれないと、携帯を強く握りしめるが、その手は震えている。
その様子を見たミットンが
「だぁいじょうぶやて!2人は車んなかに居らへんのやから。生きてるはずや」
とポンと肩に手をおいた。しかしその声すらも僅かに震えている。
そんな様子を見ながら、ゴウは二人の後ろを黙ってついてきた。
「ここだよ」
警察官が指差した茂みの中に、車は埋まっていた。
逆さまになっている白い車。窓ガラスは割れ、所々へこんでいる。茂みの枝はあちこち折れていて、すごいスピードで車が落下したことを思わせる。
もし2人が中にいたのなら、確実に死んでいる。
しかも、車は崖から 少し離れて落ちていた。
「あいつ、ブレーキ踏まなかったのか」
ミットンが呟いた。
「君たち」
警察官が呼んだ。
「これは君たちの友人のものか?」
彼の手には携帯が握られていた。
「嘘、チー、携帯持ってないの?」
それは間違いなくチーボーの携帯だ。
クニは自分の携帯を見た。当然ながら、未だに誰からも着信はない。
「そうみたいやな」
ミットンの声も沈んでいる。
やはりゴウは黙っていた。
「携帯とは関係ないんだが、一つだけ、おかしいことがある。」
警察官が言う。
「この車が落下してから、ドアが開いた形跡がないことだ。わかるか?」
確かに、車はドアごと、潰れていて、簡単には開きそうにないが…。
真意がわからず3人が黙っていると、警察官はやれやれといったように首を振った。
「つまり、この車に乗っていた2人は、空中でドアをあけて外に出てまた律儀に閉めたか、車の中からきれいさっぱり消えてしまったということさ。
…もしくは、何らかのために車に細工をして車だけ突き落とした」
ここまで言うと、その警察官はじっと3人の様子を窺った。どうやら3つ目が彼の聞きたい本当のところらしい。
やがて、何も知らないようだと分かると、諦めたのか、また車を調べ始めた。
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