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その後いろいろ話を聞いたり、見せてもらったりしたが、手がかりになりそうなものは何もなかった。警察は次々と遺留品を見せて、どちらの持ち物かをデータ化していった。
2人の残した物を見ながら、何となく、もう二度と二人に会えないかもしれないという考えが生まれた。
どうやら、警察の方はチーボーとムックがわざと車だけ突き落としたと考えているらしい。
ブレーキに細工がないか、念入りに調べていたからだ。
もちろん、3人にはそんなことを信じる気は全くない。ただ警察の、滑稽にも思える捜査を見ていた。ゴウが堪えきれないのか、クソ、と近くの茂みを蹴飛ばした。
そして夜、3人はやっと解放され、また大学まで戻ってきた。
誰もなにも言わない。
ミットンは車を大学の前に停めると、ゴウを降ろした。
「…ほんまにここでいいんか。ゴウ。」ミットンが後部座席のゴウに聞く。
ゴウは苦しげに笑う。
「大丈夫っす。下宿、この近くですし。それにちょっと風に当たりたいんで。…今日はありがとうございました。」
「おぅ」
ではまた、とゴウは深く頭を下げてから歩いていった。
足取りは重かった。
続いてミットンはクニを家の玄関の前まで送った。
お礼を言ってから車を降りると、クニはフラフラしながら、ゆっくり玄関まで歩いた。
ミットンはクニが家にはいるまで、その後ろ姿を心配そうに見つめた。
今日1日で、クニはまるで人が変わったように大人しくなってしまった。
「クニちゃん!」
クニが振り返る。
「あいつらは絶対大丈夫や!警察が疑っても、俺らは信じような」
クニは軽く頷いて、家に入っていった。
すぐ見つかればええけど。
クニが玄関に入ると、ミットンは静かに車を発車させた。
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