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4月下旬、春の日差しが強くなってきた、ある金曜日の午後。
「あー楽しかった!!新入生歓迎バーベキュー!なんか、大学生って感じやない!?なあクニ!」
日も暮れた時間、大学近くの川沿いを、大学生になりたての二人が並んで歩いている。
「もー、チーボーったら。そんなにはしゃいでるとあんたはまだまだ高校生みたいよ。」
クニ、と呼ばれた方が、呆れたようにつぶやく。
ほっそりとした体に染めたての栗色のロングヘア。
白い肌が引き立つ少し濃いめの色のワンピースを着ている。
ふわふわと笑いながら、街灯の少ない砂利道を、転ばないように少し慎重に歩いている。
「だって、さ、せっかく二人揃ってこの大学に入れたんやもん。…クニと大学生活送るのはちょっとした夢やってんで!」
チーボー。
大きめのパーカーに真新しいジーンズとスニーカー。
髪は短く刈り込んで、申し訳程度に染めてある。
背は、クニより頭一つ分高い。
大股で、でもクニのスピードに合わせながらゆっくりと歩く。
「クニは頭ええから、同じ大学受験するってだけでそらもう大変やってんから」
はしゃいだことに呆れられて、不満であるらしい。
拗ねたように口をとがらせる。
「あぁ、そうね。わかってるわ。チーボーの努力は私が一番知ってるもの。
…ねえ、ところで、あなたなんで髪の毛短くしちゃったの?」
クニは話題を変えた。
ずっと言いたかったことのようだ。
「あぁ、これ?
や、いつものくせでな、美容院行って『ベリーショートで』って言っちゃってん。
まあ、いいやん。また伸びるって!」
「そうだけど…。
あ~あ、『スカートはいた男子』なんて言われてたから、大学入ったら絶対イメチェンさせようと思ってたのに。
これじゃ余計に男の子にしか見えないわ。」
特に気にしていない様子のチーボーに、クニが肩を落とす。
「…そんなんじゃ恋も実らないわよ」
クニの言葉に、チーボーがぎくりとした。
「…ばれてました??」
「当り前でしょ。さ、白状しなさい」
「いや~…」
チーボーは渋ったが、クニはキラリと目を光らせた。
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